子ども反対咬合の長期矯正治療例(3歳男子 治療期間7年)
執筆者:院長 歯科医師 永井伸頼
子ども反対咬合の治療例(Before&After)と解説
年齢・性別 | 3歳男子 |
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治療期間 | 3歳(初診)~10歳(現在)までの長期症例 |
抜歯 | なし |
治療費(税込) | 220,000円 拡大床上顎(3個使用)、下顎(1個)使用 |
備考 | 治療方法:拡大床のみ 主訴:かみ合わせが上下で反対になっている。母親が反対咬合のため外科手術の既往有り。 |
初診時3歳で反対咬合の治療希望で来院しました。母親が反対咬合で外科処置+矯正治療の既往があり早めの治療を望んでいました。
初診時の写真をみると下顎乳前歯の噛み合わせが反対咬合になっています。横顔写真からはややムーンフェイス(反対咬合特有の顔貌形態)の傾向があるように見えますが、口腔内歯列からは、上顎前方位劣成長を疑う所見でした。
2年ほど経過観察して、5歳になってからムーシールドを使用した治療から始めました。就寝時のみの装置装着になりますが、それなりに効果は期待できると考えます。今回は、安価で使用方法も簡単なことから、結果を期待するよりも、これから先の装置装着に慣れるための予備装置として使用しました。結果、ムーシルド単体での使用では反対咬合改善の効果はありませんでした。
上顎前方拡大を行うために、拡大床を使用した治療方法を選択しました。6歳になって本人も装置を1日14時間(必要最低時間)装着できるとのことでしたので、やや早い年齢からのスタートとなりました。このようなケースにおいては、上顎前歯部が永久歯に置き換わってからスタートする場合でも十分に効果が期待できますが、早くから始めたいという親御さんのリクエストから早期に始める事もあります。
中央写真、9歳混合歯列期になりますが、反対咬合がまだ認められます。しかしながら上顎歯列の前方拡大と下顎前歯部の歯軸の改善により、反対咬合が改善できると考えられますので、上顎においては3個目の拡大床、さらに下顎の装置も同時に装着してもらいました。
その後一年ほどで反対咬合の改善が認められました。下段写真となります。今回のように乳歯列期から治療を始める場合もありますが、多くのお子さんが装置を長期にわたり装着すると、ストレスとなることがあります。早期に治療開始しなければならないケースはやむを得ませんが、永久歯が萌出してからの混合歯列期からの治療開始でも、ほとんどのケースで改善することが出来ます。治療開始できる必要条件としては、装置を一日最低14時間装着できるかどうかです。